第26回公共サービス研究会(2009年9月14日)
テーマ:これまでの研究会の中間総括と今後の取り組み
各報告者の報告・レポートです。参加者が少なくちょっと残念でしたが、内容の濃い研究会になりました。公共サービスの今後にむけて、さらなる交流・実践が望まれます。
■岩崎松男さん(公共サービス研究会事務局/国労闘争団)
リーマンショックで、新自由主義の破綻を明らかにした。オバマの登場、民主党政権の誕生と、これまでの体制からの転換が始まっている。その意味で、公共サービス研究会の中間総括と今後の取り組みを、これまでの研究会を通して考えて行きたい。
民主党も自らの政策で大勝したとは思っていないだろう。反自民という風の上での支持であることを認識しているだろうから、下手なことはできない、しない。それも含めて、「公共サービスが地方や僻地にも公平なサービスを」というだけではなく、「限界集落」のようなところの解消とどこでも生活できる地域作りも含めた取り組みが求められていると思う。
JR問題でいえば、民営化の象徴的事件としてある福知山線事故で、4.25ネットが作られ、安全より金儲けを徹底してきたJR西日本社長の責任を求める訴訟、信濃川の「水ドロボウ」で水利権停止に対する責任追求などの社会的に包囲する闘いが展開されている。
■日野正美さん(電通労組)
民営化から25年目、官から民への労働者の意識改革から始まり、効率化のもとの組織統廃合と人員整理が徹底され、11万人リストラ等、利益の最大化のためのコスト削減が労働者への犠牲転嫁のなかで行われた。労働者の高齢化、新規採用抑制のなかで技術伝承がはかれず、業務の委託化、外注化が進み、「全国あまねく低廉な料金で提供」するとしたユニバーサルサービス責務も果たせない状況にある。
固定電話業務から光電話とインターネットを中心としたブロードバンドサービス業務への転換と金儲け前提の経営が進められており、日本一の営業利益を上げているにも関わらず、固定電話、公衆電話、緊急通信等のユニバーサルサービスは「ユニバーサルサービス基金」で赤字分を補填している。それを通信事業者が負担するのではなく、ユーザ負担(1電話8円)になっている。膨大な内部留保と営業利益を社会に還元することを要求していくことが必要だ。
■京極紀子さん(がくろう神奈川)
学校も民営化の流れにある。小泉構造改革下の「教育改革」と教育基本法改悪の中で教育振興計画のもと、愛国主義、競争主義教育が猛烈に進められる。すでに現業部門(給食など)の民間委託は進み、大学は独立法人化され、文科省の査定を受け予算がつけられるなど規制が強化されている。
文科省が「過度の競争につながらない」といって始まった学テも3度めを数え、大阪・鳥取・秋田など国の意向に反し、結果を「公開」する自治体が後をたたない。民主党は、学テ中止を明らかにしているが予算の無駄つかいのレベルであり、反競争主義教育ではない。採点も民間に丸投げであり、子どもたちの情報が民間教育産業に蓄積されている。
「教員の子どもと向き合う時間の拡充政策」のもと、民営化が進む。その中身は、学校事務職員に教員業務を肩代わりさせたり、非常勤講師など非正規労働者の活用、学校地域支援本部など地域の人たちを動員した教育活動であるが、求められている教育の中身こそが問われなければならない。杉並・和田中の夜間塾「夜スペ」の実施主体も地域支援本部だ。親の所得格差が子どもの教育格差となっている。誰でも平等に保障される教育が求められている。
■迷彩服男さん(医療労働者)
都議会第一党の民主党は、救急医療拠点については言っているが都立病院問題については不透明な対応だ。9月14〜18日にかけて座り込み行動を予定している。病院で働く労働者、地域住民、利用者の連携した取り組みが必要だがまだ不充分である。
財政再生法のもと、自治体は地方独立法人化、指定管理者制度等の手法で自治体立病院を切り離す方向にある。「公共サービスである病院は赤字でも良い、むしろ医療に収益を求めることが誤りだ」ということを前提にした取り組み、訴えが必要だ。
■宮下さん(保育園民営化の状況)
昨年来の派遣切りやリーマンショックの影響で、保育園の入園申請が格段に増えた。23区の場合4〜500人の待機となっている。(しかも、認可外・認証在籍で、認可園への入所希望はカウントされていないので、実際の待機は倍以上いる)各自治体とも、緊急対策(直営の保育室や、廃校になった小学校を利用した分園開設など)を乗り出した。(練馬区のように「放置」の自治体もある。
待機児緊急対策の方が優先として、民営化を撤回・先送りする自治体も出てきた。(船橋・所沢・西宮など)また、仙台市などは、幼稚園の活用特区のようなことも始めていて、朝日新聞の論調なども似通っています。今年二月二四日、社会保障審議会少子化対策特別部会において、昨年来、提案されてきた保育制度改革の「第1次報告案」が少しだけ修正されて了承されました。
保育制度改革の特長は、今は市区町村が負っている保育の実施義務をなくし、利用者(保護者)と保育園との「直接契約」にすることを大きな柱とするものです。
市区町村は、親子の状況に対し「要保育度」認定だけをし、利用者が直接保育園とかけあって入園手続をし、保育料も保育課ではなく園に払うようにするというものです。厚労省は「親がサービスに応じて直接保育園を選べるようになる」「希望する保育園を選べるようになる」としますが、障がい児・ひとり親・外国人家族・生活保護世帯など、園にとって手がかかり「儲からない」親子は置き去りにされていくことは容易に想像がつきます。また、これだけ待機が出ている中で、実際は選ぶ余裕などないと思います。
また育休中に、赤ちゃんを抱えて、保護者が入園できる保育園を探して何園も訪ねてまわらなければならなくなります。介護保険や障害者自立支援法で生み出された事態が今後は子育て世帯に押しつけられようとしています。新政権になってどう軌道修正されるか、かなり大きな問題です。
■棣棠浄さん(郵政労働者ユニオン)
郵政民営化は、西川を筆頭をした利権収奪であることを明らかにした。郵政サービスは低下し、労働者は郵便局の統廃合で疲弊している。
民主党政権誕生で、株式凍結法案が臨時国会で可決されるだろう。来年の通常国会では「郵政見直し法案」が提出され、抜本改正が図られると思う。
ユニオンとしては、「見直しプロジェクト」を作って対応していきたい。2点目として、三党合意に向かい合い、現実的に対応できるスタンスであるか見ながら、対案(法案)つくりに参加していくことを考えて行きたい。統廃合された集配局の復活等、分社化で壊されたものの復活等、地域と郵政労働者がともに考えながら取り組んで行きたい。 社民党の国会議員と討論をしながら進める。
10月1日、ゆうパックとペリカン便の合併で「JPEX」が発足しようとしているが、総務省が認可しておらず、JPは、9月11日、10月1日の発足を延期することを公表した。しかし、現場は、今年の4月から準備が進められ、既に雇い止めや労働日時の削減等が先行されて混乱している。ユニオンは、JPEX発足を断念するよう求めて交渉しているが、9月18日にストライキを構えて、雇い止め撤回と会社発足断念を求めていく。
■各氏から提案を受けて、今後どうするかを討論した。
・「生活第一」の民主党政権へ運動を通して要求していくことが必要。
・公共サービスの復権.復活のために、勝てそうなところを前面に押し出していくこと。
・新自由主義が終わったわけではない。支配層も変わっていない。世論を通して公共サービス防衛を作り出していく必要がある。
・民営化をこれまで認めてきた労働運動の責任重大。非正規労働問題、破壊された地域の再生、価値観を変えていく提案と「職場、地域、生活の再生を目指した集会」を。
文責:公共サービス研究会事務局